体力づくりを目的に、８月後半からプールに通っている。昔は水泳が得意（水泳がある２学期だけ、体育の成績は５）だったが、10＋α年ぶりの水中は、かつてのように私を快く受け入れてはくれなかった。25m泳いだだけであっぷあっぷである。
しかし、回数を重ねるにつれて泳げる距離と時間が伸びていくのは楽しかった。2ヵ月くらいで30分１kmちょいを泳げるようになり、水中と再び仲良くでき始めている今日この頃。最初は泳ぐのに必死だったが、今では周りを見る余裕もある。
ガチンコのマジンコですいすい泳ぐ人や私のようにマイペースで泳ぐ人もいれば、泳ぎが苦手な人もいる。レーンは自己申告の泳ぎレベルにわかれており、それほど広いプールでもないから、タイミングによっては同じレーンを複数人が使うことになる。追いかけるのも追いかけられるのも好きではないので、人がいない時間を見つけて通っていたの、だが。
世界には２種類の人間がいる。男と女が２人でいることに理由を見つけたがる人間と、そうではない人間。私は前者。
いつものように泳いでいると、同じレーンで平泳ぎをしている人がいる。この人、さっきは別レーンでプールの縁につかまりながら平泳ぎの足の練習をしていた女性である。隣には男性が立っており、こうだよと教えていた。
個人的な偏見と興味で大変恐縮なのだが、この２人はどういう関係なのだろうか。
夫婦ではないのだ。「たにちゃんはもう（終わる）時間だよねえ？」と女性が言っているのを聞いたから、たぶん夫婦ではない。ついでに言うと、この時の声のトーンはいくらか高い、気がする。
大人の女性が男性をたにちゃんと呼ぶその時、しかも若干甘い声を発する時、そしてプールで泳ぎを教わる時、二人の関係は何と呼ばれるのだろうか。友人？トレーニング仲間？近所の人？職場の同僚？それとも。
30分近く泳いで酸欠気味の私は思考がうまく働かず、極端な答えを出す。いけない恋ってやつだろ！
これが陸上ならまあまあ……だけれど、お互い水着だし男の人なんて上半身裸だし、ただの「仲がよい」からさらに一歩踏み出す必要がある気がするのだが、どうだろうか。水着姿を見る／見せることに抵抗がないだけだろうか。私はそこを「見せてもいい仲」と読み取って、じゃあそういう仲ってどういう仲なんだと一人考え込んでいる。
知らない人に水着姿を見られるのは平気だけれど知人に見られるのは嫌、という私の考えはそもそも世間の一般的な考えじゃないのかもしれない。二人は特におもしろい関係ではないのか。たにちゃんは自らたにちゃん呼びを推奨しているのか。のっぴきならない事情で平泳ぎができないと困るのか。
男性と女性が二人でいるからといって、そこにいつも必ず愛だの恋だのLOVEだのが発生しているとは限らない。そこにしか辿りつかないのは、己の想像力が未熟な証である。この二人の関係性がわからなかった私は、まだまだ修行が足りないということだ。
