11/21晴れのちくもり、アプフェルシュトゥルーデル

アプフェルシュトゥルーデルをご存知だろうか。

アプフェルシュトゥルーデルとはオーストラリアおよびドイツのお菓子で、パイのような生地でリンゴのフィリングを巻いた食べ物である。

 

小学生だった頃、日本でオリンピックが開催された。1998年の長野オリンピックである。

進研ゼミの冊子で、開催地である長野県の特産品リンゴにちなんでだと記憶しているのだが、アップルパイが特集されているのを読んだ。どうでもいいけれど、小学校から高校まで休みつつも進研ゼミをやっていたくせに、一度も赤ペン先生を提出したことがない。自主的にやりたいと言っていたはずだがマンガしか読んでいなかった。

とにかく、その特集が全てのはじまりである。

何十にも重なりいい音が出そうな焼き加減のパイ生地、てろりと輝きあまい香りを放つフィリング。アップルパイという存在がもうすでに私の中では特別だったのだが、この時取り上げられたのはただのアップルパイではなかった。そう、アプフェルシュトゥルーデルである。

 

男性のパティシエがアプフェルシュトゥルーデルを作る様子が、写真とともに紹介されている。詳細は記憶の彼方だけれども、「生地は新聞紙が透けて読めるくらい薄くします」という情報だけが、令和の今でも頭に残っていた。

新聞紙よりも薄い生地!焼き上がったアプフェルシュトゥルーデルはどんな食感なんだろう。私はツルツルよりモチモチよりサクサク派なのだが、幾重にも重なった薄い生地はきっと今まで体験したこともないほど「さっくり」することだろう。なんて美味しそうなんだ!

もちろん、アプフェルシュトゥルーデルなんて名前を覚えられるはずもなく、「巻かれたアップルパイ」というビジュアルだけを頼りに、ケーキ屋さんをのぞいては落胆する日々を送っていた。違う、これは巻かれていない……。あの食べ物に出会える日は来るのだろうか。この田舎にあんな洒落た食べ物があるだろうか、でも諦めなければいつか。淡い期待を抱き、何十回目となる秋を迎えたこの間。

 

何となしに見ていた地元の情報番組に、その姿が映った。

お店に向かった。

あった。

買った。

帰った。

食べた。

 

サクサクよりも、上にのった粉砂糖のカリカリ感が勝っていた。味も、粉砂糖の甘さが強かった。粉砂糖が全てをもっていく。街中ですれ違った名前もわからない人を追いかけて20年、偶然手にした情報をもとにその人に探し出すものの、インパクトの強い服を着ていてそっちしか印象に残らなかったみたいな。

とにもかくにも、私は自分の夢を叶えたのであった。めでたしめでたし。

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せっかくなのでもう一回食べたい