12/4晴れのちくもり、タバタババタバススコココココ

SNSで、「スタバのジョイフルメドレー」という単語をたびたび目にする。スタバの店内BGM集でも売っているのかと思ったら、季節限定のドリンクメニューらしい。そんなに人気ならばと出かけてみた。

会計が終わると、アイスラテを持って席に着いている。何しに来たんだっけ。

 

ピザトーストが食べたくなった。食パン、ピザソース、玉ねぎとかピーマンとかベーコンとか、そしてチーズ。その味はかんたんに想像できるけれど、舌で確かめたい。いや、味なんかどうでもよくてお店で食べるという儀式が大事なのかもしれない。とにかく、本当に食べたくなってしまった。

ピザトーストはすぐに出てきた。天気のよい昼下がり。お店の人がテーブルに残った食器を片付けているほかには、制服姿の女子高校生が1組しかいない。その1組は2人組で、それぞれオレンジジュースとサンドイッチ、それにケーキを頼んでいた。

少し分厚い食パンで作られたピザトーストは、真ん中で十字に、正しく4つに切られていた。脇には、付け合わせに千切りキャベツと1/4にカットされたゆで卵。

口に入れれば、なんてことのない味だった。想像した通りの、辞書に載っていそうなピザトースト。材料を買ってくれば家でだって作ることができるけれど、今日に限って言えばそういう問題ではない。ピザトーストを、じっくり堪能する。

1切れ食べて、次はタバスコをかけることにした。いつからタバスコを使うようになったんだろう。それまでは全く必要なかったのに、気づいたら、ミートソーススパゲティとタバスコの組み合わせが好きになってしまった。ストレスだろうか、ストレスめ。

 

蓋を取って瓶を一振りする。出ない。何回か振る。たぶん、出ていない。詰まっている。

卓上に爪楊枝や紙ナプキンもなく、仕方ないので振り続ける。タバスコと一緒に置かれているのは塩だろうか、味が薄かったら使ってくださいということかしら。だから東北人は高血圧なんだよな。まだ出てこない。ぶんぶん、ぶんぶんぶん、ぶんぶんぶぶんぶん。

タバスコの塊がぽっと飛び出し、惰性で振り続けた瓶の口から、タバスコがピザトーストの上に流れ落ちた。女子高校生たちが店内の写真を撮っているのだろう、シャッター音が聞こえる。タバスコが滴るピザトーストを目の前に、頭の中は静まりかえる。

とりあえず、と思って一緒に頼んだミルクティーを口に含むと、シナモンの香りが広がった。それはそうだ、シナモンミルクティーを注文したのだから。シナモンってこんなに強い風味だったかしら、新鮮なシナモンなのかもな。そうだ砂糖を入れていない、だから飲みにくいんだ。白い粉を手に取りカップに入れる直前に気づく。これは塩だ。

砂糖を入れるとシナモンの香りが和らいだ。頭の中で誰かが言う。なんでシナモンなんか、スタバのジンジャーブレッドラテだって、雰囲気で飲んでるくせに。

 

伸びるチーズの黄色にピーマンの緑、そして輝く赤いタバスコ。恐れているのは辛さではない。落ち着いて、一口かじる。ふが、変な声が出る。そう、恐れているのは辛さではなく、酸っぱい匂いでむせること。いや、唇も痛くてぴりぴりする。ミルクティーに口をつける、熱い。空気が変なところに溜まっていて、気を抜くと咳き込みそうだ。

何をしているんだろう。私はただ、ピザトーストを食べて、小粋なひとときを過ごしたかっただけなのに。くふんくふんと咳をごまかしながら、唇にじんじんと熱を持たせながら、なぜ私はそんな目に遭いながらピザトーストを食べているのだろう。ミルクティーに砂糖を追加する。シナモンとかスパイスとか、得意じゃないのかな。でも魅力的な響きだからつい頼んじゃうんだよな。私はこれからもきっと、同じ後悔を何度もするんだろうな。

私はいつかまたタバスコをかけすぎる日が来て、そして「前もこんなことがあったな」と思うのだ。