やらなきゃ結果は出ないのよ 『マインドセット 「やればできる!」の研究』(キャロル・S・ドゥエック)

高校野球の季節ですね。

野球にはあまり興味がないのですが、高校野球はついつい見てしまいます。高校生という身近な存在が、ドラマティックに感情を表し、時には大きく人生を変えうる瞬間を見れるからでしょうか。なんつって。

 

勝ち続けられるのは日本で一校だけ。だからこそ栄冠の重みが出るわけですが、じゃあ勝てなかったら、結果が出せなかったらダメなのか、いやいや、その考え方は違うでしょ、という本です。いや、ここまでの思考はできるけれども、じゃあ、もっと具体的にどう考えたらいいのか、あるいはどのように声を掛けたらいいのかまで示してくれます。

 

本の中では2種類のマインドセット(=考え方、くらいの意味かな。以降、MSと略します)が登場します。しなやかなMSと硬直的MS。今ある能力をより伸ばそうと努力するか、いや、自分の能力は伸ばせないんだと諦めるか、の違いです。特に後者は、今ある能力だけで一生を過ごさなければならないと考えているので、自分が有能だと思い込む、あるいは周囲にそう思わせることに必死です。能力が変わらないんだから、乗り越えられない壁はずっと乗り越えられないままだし、今の状態で失敗したらその後もずっと失敗者だ、と考えます。

身体的・能力的にもともと恵まれているとは言えなかったけれど、基本や失敗からの学びを生かして大きな功績を残した。あるいは、才能あふれるスポーツ選手が自分の能力に頼り切った結果、後年大きな実績を残せなかった、と言えばわかりやすいでしょう。

友人にはしなやかMSの考え方で接する人でも、自分のこととなると硬直的MSになる人っているんじゃないでしょうか。私はそうです。1つの失敗で自分を全否定してしまいます。これが自分以外だったら、○○は失敗でも××はうまくいってたじゃない、次に生かそうよ、くらいは言えるんですけどね。

 

違いはなんとなくわかるんだけど、じゃあ具体的にしなやかなMSの人はどう考えるのか、そこがわからないと自分に活かせません。本の中では、しなやかMS・硬直的MSである人を取り上げて、具体的に行動パターンを紹介しています。

次の2点を覚えておけばいい気がします。

 

学ぶことに重きを置く

勝ったか負けたか、できたかできないかに注目するのは硬直的なMSの特徴です。しなやかなMSの場合、そこに至るまでの過程を大事にします。つまらない課題でも前向きに取り組むよう気持ちを切り替えますし、難しい課題であれば、向上心を持って問題にあたります。「~できるだろうか」と不安になるのではなく、「~するには/させるにはどうしたらいいだろうか」と、その方法を考えます。失敗したならば、失敗自体に注目するのではなく、その失敗から何が学べるのか分析します。

気をつけたいのは、自分の発言が相手のMSに影響を与えてしまう点です。テストで何点だったんだ、大会の結果はどうだったんだ、取引はうまくいったのか。結果が良ければ褒められ、悪ければ叱られることが続くと、相手は結果がすべてなんだという硬直的MSに傾きます。

逆に、ここができなかったのなら勉強が足りなかったんだね、練習した成果が表れたね、と過程を分析的に述べると、「次に生かそう」というしなやかMSにつながります。大事なのは、しなやかMSも結果をないがにしろにしているわけではなく、このような結果になったのはこれが原因だね、とあくまで過程>結果と考えている点です。負けは負け、失敗は失敗だと受け止める必要があり、例えばスポーツ競技で最下位だった子に「私にはお前が一等賞に思えたよ!」と言うのは違います。

 

努力と工夫を怠らない

皆さんは一生を添い遂げようと思える人はどんな人だと思いますか?

会った瞬間ビビビと来た人?なんでも意見や好みが合う人?あるいは、出会ったときは気が合わなかったんだけど、次第に打ち解けた人??

硬直的MSの人は、人間関係に努力や工夫は不要だと考えます。合わない人、離れていく人がいるのは仕方ない、他人とは自然と仲良くなれるものだと考えます。しかし、しなやかなMSは、人間関係は育むものだと心得ています。合わないところがあるなら合わせる努力をする、関係を成り行きに任せない、そういった行動をとります。相手の欠点を受け入れ、それが変えられるものだと信じ、必要があれば行動に移します。「ありのままの姿」も大事ですが、しなやななMSの持ち主は、変える/変わるべきところは変化しないといけない、と考えるのです。

人間関係について面白いと思ったのは、子どもたちのいじめっ子に対する考え方です。硬直的MSは復讐すると考えたのに対し、しなやかなMSの子どもは、相手にいたずらをしないよう変わってもらいたい、と考えたことです。デリケートな内容ですのでいろいろな意見があると思いますが、いじめっ子の考え方を変えるという発想は私にはなく、硬直しているなあと感じました。

努力と工夫は、しなやかなMSの人が常に心掛けていることです。能力を変えられると信じているからこそ、できることです。硬直したMSでは、どうせ変わらない、と考えたり、あるいは自分は優秀だから努力は必要ない、と考えます。

 

 

「やればできる!」と副題にはありますが、内容としては少し違うような気がします。努力して頂点を極めた事例も載っていましたが、一般人が取り組めば何事もできるようになるよ、というメッセージは受け取れなかったような。しなやかなMSは能力を伸ばす考え方ではあるけれども、どこまでも能力は伸びる!!みたいなことは書いてなかったし。(しなやかなMSになろうと思えば)やればできる!ということなのかな。どこに焦点を当てているのか、私の解釈がずれている気がします。

それは置いておいて。MSのことはわかった、自分もしなやかMSに変わりたい!と思ったところで、この手の本はいつも終わってしまいます。これもしなやかか硬直してるかで分かれるところなのでしょう。しなやかなMSの人は、学んだことにきちんと取り組むのだと思います。

やればできるのであって、やらなきゃできないままです。ちゃんと生活の中に取り入れないと意味がないよ、と自分に言い聞かせて、今回は終わります。

 

 

マインドセット「やればできる! 」の研究

マインドセット「やればできる! 」の研究