1/22晴れ、戦場のモーニング

最近、休日の朝ごはんは同じものばかり食べている。コーヒーと、つぶしたゆで卵をのせたパン。これが休日の定番である。

 

コーヒーは豆から挽いている。去年のふるさと納税で手動ミルを手に入れて、買ってきたコーヒー豆をその都度挽いている。まず、この触感というか、振動がよい。ミルのハンドルを回すことで豆が挽きつぶされていくのがおもしろい。

例えば、自転車で砂利道を走っていくときの振動が、私は好きだ。人間が動くのに合わせて吊り橋が揺れてしまっても、怖くない。ただし、温泉や銭湯、家電量販店にあるマッサージチェアには近づけない。くすぐったがりなのもあるけれど、自分の身体で起こした振動のことしか好きになれないのだろう。

だから、ミルを使う時間も好きだ。手に伝わる抵抗が小さくなると、代わっていい香りが漂う。お店で挽いてもらったコーヒーの粉を家で保管すると香りが弱くなるが、こうして自分で挽けば維持できる。この点もよい。この香りは土曜日の香りだ。

そうしてできた茶色い粉をドリッパーに入れて、沸かしたお湯を注ぐ。粉の量もお湯の量もまちまちなので、毎回コーヒーの味は違う。淹れ方も勉強したいところである。

 

同時に、パンを用意する。パンはパンでも、イングリッシュマフィンがいい。カリカリに焼いて、上に卵をのせる。ゆで卵をつぶしてマヨネーズに少しのケチャップ、そして胡椒をふりかけて混ぜたものである。たまに、ツナ缶とチンしたみじん切りの玉ねぎをやっぱりマヨネーズで混ぜて、それをのせたところにチーズをかぶせてみたりする。個人的には、ゆで卵の方が好きで、そちらばかり食べている。

ゆで卵は何分ゆでるのがいいのか。水から12分だと、黄身が少しゆるい。これだと、パンにのせるには水分が多すぎる。13分だと、今度はかたい。マヨネーズを多めに入れないと、ぱさぱさしているのが少し気になる。どちらも、ゆで卵として食べるには最適だが、パンの上にのせるとなるとどうだろうか。

とりあえず、「今」の「私」の正解は12分30秒ということになる。暖かくなって水道水の温度が上がったり、卵の大きさが違ったり、正解が変わる要因はいくらでもある。加えて、「私」の好みが常に同じとも限らない。たまには、ゆるくゆでた卵ソースを味わいたいこともある。常に、観察力を研ぎ澄ましておかなければならない。

 

できれば、コーヒーとパンは同時に出来上がるようにしたい。まずは卵を火にかけてタイマーをセットし、顔でも洗っておく。化粧水をつけたら、卵を入れている鍋の火を弱めて、薬缶を隣に置きお湯を沸かし始める。マグカップにドリッパーを準備して豆を挽き始めるあたりでタイマーが鳴り始めるので、止めつつ卵の殻が剥きやすいように冷やしておく。

ここで美容液を塗っていないことを思い出す。塗るために鏡を見ると、髪もボサボサなのでついでに軽くドライヤーで整えて、今度は鏡が汚れていることに気づいた。拭いてから台所に戻ると、薬缶から真っ白な湯気が勢いよくぼぼぼぼぼと飛び出ていて、慌てて火を止める。

お湯でマグカップを温めていると、豆挽きが途中のまま放置されているのが目に入る。そういえばまだパンを焼いていない。トースターがないためフライパンで焼くのだが、卵が茹で上がったのと交代でフライパンをセットしておく必要があったのに忘れていた。卵も冷やしっぱなしだ。それから、顔に保湿用のクリームを塗るのも残っている。

なんて見事な、絵に描いたようなマルチタスクなのだろう。

 

今朝はなかなかうまく進行して、穏やかな朝ごはんを迎えた。しかし、うまくできたからといって油断すれば、再び台所は戦場と化す。明日の運命やいかに。

片付けながら料理をするのが料理上手、なんて誰が言ったのだろうか。