4月には私の誕生日がある。
せっかくなので、ケーキを食べようと買いに出かけることにした。ついでに、自分への誕生日プレゼントと称して、使い道は思い浮かばないが飛び切りかわいいお皿を、以前から気になっていて誕生日まで残っていたら買おうと思っていたそれを、手に入れるべく街へと向かった。
春になると靴がなくなる、のは私だけかもしれない。今までは雪道をブーツで歩いていたが、そろそろ防寒・防滑機能は不要だろう、とブーツではない靴を出すために靴箱をのぞくのだが。ああ、歩道の水たまりにうっすらと氷が張り始めた頃にブーツを準備しながら、くたびれた靴をいくつか処分したんだっけ。いくつかってか、ほぼないな。
じゃあ普段歩くのに使いやすい靴を準備しなきゃ、誕生日もあるし、自分用のプレゼントってことで。あれもプレゼント、これもプレゼント。誕生日万歳!
そんな経緯で購入した黒い靴を履き、いよいよ出発する。あれ、なんかきつい、気がする。そして少しの嫌な予感。
嫌な予感は見事に的中し、帰ってきた私の足はズタズタのボロボロだった。靴擦れで水膨れになるのはやけど状態だから、と誰かが教えてくれたことを思い出しながら、絆創膏を貼る。いくつになっても、こういう、お風呂に入るとしみる系の傷は苦手だ。
そもそも、なんでここまでひどくなったのか。途中までは擦れてちょっと赤くなったくらいで、水膨れもそこまで大きいものはなかった、と思う。しかし、少し遠いケーキ屋さんに寄ったのが大きな間違いだった。お皿を無事に購入し、テンションが舞い上がった私は正しい判断ができず、欲望のままに「行きやすい」お店ではなく、「食べたい」お店を選んでしまったのだ。
お店に着く頃には、いっそ靴を脱いで帰ってやろうかほかに人影もいないし……と考えていたが、結局、きちんと靴を履いたまま家に着いた。途中で気になる飲食店を見つけられて、ラッキーと思ったり。ちなみに、そのお店に行った際に、セルフサービスのお水を持ってこようとして粗相をしたのはまた別のお話。
そうやって苦労して手に入れたケーキはとてもおいしかった。さらにさらに、ティラミスとフロマージュの容器がガラス製だったことに再びテンションが上がってしまった。こういう、ケーキの容れ物が再利用可能だと、私は少しばかり嬉しくなる。何に使うんですか、と言われても特に思いつかないけれど。
何に使うか、そんなこと言われたって困るものは多い。例えば文房具、特に紙類は使っていないけれどいいなと思ったら買ってしまう。ノートとかメモ帳とか付箋とか、いろいろ。先に述べたお皿だって、かわい過ぎるので乗せるものが限られてくるし、もういっそ鑑賞用と割り切ってしまおうか。
どちらかと言わなくても回り道が多いし、失敗しないと学ばないし、紙の本じゃないと読んだ気しないし。いくらでも効率化できる社会でずいぶんと非効率的な生活を送っている自覚はある。そうわかっていても、ケーキの容れ物だったガラスのカップを眺めては嬉しくなってしまうので、頭に隕石でも当たらない限りこのままなのだ。
ああ、意味もなくメモ帳が欲しくなってきた。
ティラミス、タルト、フロマージュ